つれづれログ。

いろいろ齧ってぜんぶおいしい。

「私はいいの、」という呪文~マリウス感想(?)~

 

本日の議題!ババンッ!!

 

「はたしてマリウスはクズなのか?」(と、同時に「ファニーはいい女なのか?」)

 

2幕が始まったあたりからずっと引っかかっていたこの疑問。

マリウスはしょーもないクズ男なんだよ!という前情報だけ得て観に行った私としてはこの作品におけるクズのハードルが低すぎて「え?そんな、え???」となってしまいました。

 

もちろん時代的な考え方の違いもあると思います。

観劇後に私よりずっと世界史が好きで論理的な友人(桐山担)と話し合ったのですが

あの時代に(どんなに強い誘惑があったとしても)家庭を選べない男=クズ

という結論に落ち着きました。

 

 

でもさぁ・・・でもさぁ・・・・・・

マリウス、結婚するつもりだったやん

せっかくの決心に揺さぶりかけたの、あの女やん

 

どぉぉしても納得できない!平成の日本に生きるややひねくれた成人女性の私はどうしてもマリウスだけを「クズ」と呼べなくてモヤモヤしている!!!

 

「家族を選べない男は~」という理屈で落ち着けたけど、そもそもマリウスは最初から自分に家族ができるリスクを回避していたんですよ。

「ファニーのことは好きだけど僕は結婚しないから、気持ちを伝えられない。」ってちゃんと伝えてあげてるんです。この時代に結婚しないで恋人として関係を続けるなんてマリウスにとってもあり得ない事だったんですよ。

そんなマリウスの頑なな決意を揺るがしたのが、船長と契約を交わそうとしたマリウスを引き留めてきたファニー。「海より素敵なものはいっぱいあるのよ!私が教えてあげる!それでも海に行きたいなら船乗りになればいい!」そこまで言ってのけたファニーに心動かされてマリウスは船に乗ることを諦める。

 

今思うとこのシーンが一番悲しい。

 

この時点でマリウスは船への思いを断ち切ろうとしたんだと思うんです。ここでファニーと家族になって一生マルセイユで生きていく。父親と同じようにカフェのマスターとして生涯を終える。本心で納得できてなかったとしても一度諦めてしまえばチャンスなんて2度と来ないし、今まで通り海に思いを馳せるだけで済む。

対するファニーもマリウスと家族になってずっと生きていこうと思っていた所は同じ。ただ彼女の場合、「マリウスが一切の海への思いを断ち切って」自分と家族になってくれると思っていたんじゃないかなぁ、と。

 

この食い違いが明らかになるのが1幕のラスト。

ファニーはあの手この手(色仕掛けですね)でマリウスを繋ぎ止めようと奮闘します。

が、そんな事知らない周りの大人からしたら、結婚もしていない他所の娘の家に毎晩通っているマリウスなんて「何じゃあの男、人の娘に手出しよってゴルァ!!」ですよ。

 

当然2人が結婚する流れになるわけで。

勿論マリウスだってそのつもりだったわけで。

 

この雰囲気に流されなかったのはただ1人。

 

マリウスが乗船を諦めた船が出港する日。

自分にプロポーズしたマリウスを拒んだファニーは、あろうことか今度は「船に乗れ」と彼を説得し始めます。

あれこれしてみたけれど、マリウスの海への憧れは断ち切れないと気づいたから。自分のわがままで彼をマルセイユに縛り付けたら彼が不幸になってしまうから。

 

「船なんていつでも乗れる」と思ってもいないことを口にしてマルセイユに残ろうとするマリウスに、「実はパニスからのプロポーズを断ってない」と嘘までついて彼を海に送り出すファニー。

(※情緒の無い私はここで既に「今更遅いよバカ・・・」と1度目の悪態)

 

・・・で、マリウスはファニーを置いて海へと旅立ってしまう。

パニス以外の大人は2人の事情なんて知らないから、彼女を置いて(しかもやることやって)海にでたマリウスはそりゃあ悪いやつでしょう。

 

そもそもマリウスにとってのファニーって海への気持ちを鎮める唯一の要因になるくらいには大切な女の子な訳で。

そんな大好きな女の子に迫られてギリギリの理性保って!なんてファニーさんそれはもう拷問だよ・・・って思いません?これ本当にマリウスだけが悪いかな?

順序は間違ったけど結婚して責任取ろうとした男になんて仕打ち・・・。

 

「私はいいの」という言葉は、罪悪感を利用することで自分の好感度を大きく上げてくれるそうです。(現代でも男性を繋ぎ止めるテクニックとして用いる女性が実際にいるらしい。)

ファニーとマリウスの別れはこの言葉が存分に効果を発揮しています。

 

2幕の始まり。マリウスは憧れの船に乗り、海での思い出を歌います。

私、ここで「木綿のハンカチーフ」ばりに楽しい毎日を歌いだすんだと思ったんですよ。マリウスはクズって聞いてたから。

歌い出して30秒くらいで「ファニー」出てきた。

コイツ完全に引きずってる。憧れの海全然楽しめてない。

 

「私のことはいいのよ、」で送り出された結果ファニーが心に住みついちゃってるマリウス。強い。こんな昔から人間の心理変わってない。

もはや気持ちよく出発できなかったマリウスが可哀想になってきた。

 

 

そして2幕最大の事件であるファニーの妊娠。

ここに関してはファニーもマリウスも2人そろって馬鹿。ここまで頭が回らなかった馬鹿なのか、それともただ単に2人がまだまだ子供だったのかは悩ましいけれど、とにかく2人とも浅はかすぎる。

やることやったらさぁ!当たり前にこうなるじゃん?!(暴言)

お前たちの思いとか体裁とか以前の問題である。この時点ではファニーもマリウスも人の親になれる器じゃなかったんだなぁ、と。

 

でもこれ、マリウスが悪くなっちゃうよね。

ファニー、肝心なところ何も言わないもん。

 

「お前がけしかけたんだろ~ぃ!」って頭の中で何回も野次飛ばしました。

大人はみんなあんたの味方だよ・・・。強い子ね、ファニー・・・。

 

 

ファニーを引きずりながら航海を続けていたマリウスも、彼なりに心を整理してマルセイユへと一時帰国します。

彼の中ではファニーとパニスがお互いの同意の上で結婚したことになっているんです。父親からの手紙で子供が生まれたことも知っています。「おめでとう」って言ってあげなくては!(自分のこと好きだった女の子にこんなこと言おうとする思考がクズ、って解釈もできるけどマリウスはとっても素直なおバカさんだし、これはこういう三角関係にある男のお決まりの台詞だからここだけでクズと呼ぶにはぬる過ぎる)

 

ファニーを祝福しようとするマリウスに激怒する父親

ほ~ら、ファニーがちゃんと説明しとかないからおじさん口滑らしかけてるよ?

 

しかもそこに訪ねて来るファニー。

来るんかい。

やめたって~、その男まだお前さんのこと好きなんだって~。

しかし、マリウスもまだ航海の途中。この後汽車に乗って次の港に向かいます。

 

父親に別れを告げ、何も知らないまま再びマルセイユを後にするマリウス・・・その背中に向かってファニーは「マリウス、私には何も言ってくれないの?」

お前悪魔かよ。

え?一応聞くけどお前マリウスのこと好きだったしマリウスもお前の事好きだったよね?

何「近所の年下の幼なじみから好意を寄せられていたけど気づかない振りして結婚しちゃったお姉さん」みたいな雰囲気出してるの?ん?

 

当然ながら今更どうにもできない感じでごたつく2人。

ここで「まだ俺が好きなのか?」って迫るマリウスは「今更それ聞いてどうすんの」感満載だけど、この言葉を引き出したのは他でもないファニー本人なのでしーらないっ。

 

ごたついてる真っ最中にファニーの子どもを連れてカフェに来てしまうファニーのママとおばさま。(お約束の様にタイミングが悪い。)

そしてうっかり子供がマリウスの子だと零してしまったおばさま

これはファニー悪くないね。話の流れ的にはグッジョブおばさま。

 

そうとなったら話は別だ!とファニーと子供を取り戻そうとするマリウス。

ここで全てわかった上でファニーの望み通りに口裏を合わせてくれている哀れなパニスさんの登場。

全て聞いて家族を取り戻そうとしているマリウスに対し、ファニーは良いけど子供は僕から取り上げないでくれ、と頼み込むパニスさん。

絶対それが良い。この2人まるで子供育てられる気がしない。

むしろファニーはマリウスに渡そうとしてるだけでもめちゃくちゃいい人だよパニスさん。最終的にご乱心のパニスさんがマルセイユ中を血まみれにするエンドでも納得できる気がした。

 

すったもんだあって結局マリウスを説得したのはマリウスのお父さん。

言っていることはごもっともです。命だけあげたマリウスなんかより愛情をかけたパニスさんの方がよっぽど父親だ。

でもね、お父さん。詳しいことを知らないお父さんに言っても仕方ないけれどさ、家族を持って父親になって、誰かに愛情を与えるという経験をマリウスは奪われてしまったの。半分は自分の海への憧れに。そしてもう半分はファニーに。

そんなに責めないであげてほしかったな。あなたはファニーじゃなくてマリウスのお父さんなんだから。

 

ま、ど~~~考えてもお父さんからしたら自分の息子があんぽんたんに見えるよね、この展開

実際あんぽんたんだし。子供と命を何だと思ってるんだこいつ。

 

 

ここで諦めがついて、マリウスは再び海へと向かい終幕。

哀れなお前、どこへ行く?と送り出されてゆくマリウス・・・。

 

 

ファニーの自己犠牲に大人が巻き込まれていくのが耐えられなくて、何度も脳内で野次が飛びました。

そりゃファニーは気分いいよね。自分が好きな男送り出してさ、夢と憧れを追いかける後押ししたんだもん。今頃憧れの海の上にいるんであろう想い人のこと考えたらちょっと幸せな気分にもなるさ。でもそれってちょっとマリウスの気持ち無視してない?マリウスもちゃんとファニーの事好きだったんだよ?

・・・と、いうのがファニーに対する正直な感想。

 

ちなみに「私はいいから」を多用しすぎると女性には見抜かれて煙たがられるのでご注意を。何度思い出してもファニーを斜めに見てしまう私が証明です。

 

 

アマデウスの時もコンスタンツェに怒ってたけど、スタンツェは浮世離れしたアマデウスを自分の生きている世界に縛り付けようとしていたからファニーとは真逆だなぁと。

(大和田さんが観劇に来ていた日の照史くんのレポが死ぬほど好きでした。照史くん、大和田さんにはちゃんとアマデウスとして接するんだね。)

 

 

あれこれ書いたけれどフラメンコ格好いいし照史くん自身が最高の仕上がりだし、マリウス観に行って良かったです!

私はプティくんの恋模様で頭がいっぱいでした。(久しぶりに見た西畑さんが記憶より大きくてびっくりした。)愛してるを繰り返すプティくんの歌が可愛い。役として最高に素敵なので、七五三掛プティも見たかったなぁなんて思ったり。

 

なにはともあれ、照史くん千穐楽おめでとうございました!

長い船旅だったので、ゆっくり休んでください!!

 

 

(※1度しか観劇していないので、セリフも場面もやや不正確です。ある程度大目に見てください)